さて、前回の記事でも書いた通り、今回は私が最近取り組んでいる心理療法の一つである
「スキーマ療法」について、書いていこうかな・・と思います
今回の記事は、スキーマ療法の概要を、従来の認知行動療法と比較しながら、
超ざっくり説明していきます
今回の参考書籍はこちら。毎回おなじみの伊藤絵美先生ですヾ(o´∀`o)ノワァーィ♪
またか!おまえ伊藤先生大好きだな!って突っ込まれそう😅
でも、スキーマ療法に関する書籍を初めて日本語訳したのは伊藤絵美先生たちらしいので、
第一人者という意味でも適切な出典元かと思います
認知行動療法の復習
スキーマ療法はJeffrey E. Young(ジェフリー・ヤング)さんという方が生み出した、
認知行動療法の一種です。
それもあって、スキーマ療法を実践したり、学ぶ上では「従来の認知行動療法」について
理解していることが前提になります。
「認知行動療法の基本的な考え方」は以前他の記事でも書かせてもらったので、詳しくはそちらを参照ください。

必要な範囲で簡単におさらいをすると、
認知行動療法では何かしらストレスがかかった際の反応を
”認知”、”感情・気分”、”行動”、”身体反応”の4つに分けて考えます。
例えば「上司に注意された」というストレスがかかるシーンに対して
「上司にミスしたことがバレた!!使えないやつだと思われたかもしれない!」と感じて、半泣きになったとします。
このケースを認知行動療法の基本モデルに当てはめると、
例えば以下のように整理することができます。
- 認知:「ミスしたことがバレた!!使えないやつだと思われたかもしれない!」
- 気分・感情:不安、恐怖、焦り、恥ずかしさ
- 行動:なるべく平静を装って、上司の話を聞こうとする
- 身体反応:喉元がきゅっと詰まって、涙が出そうになる
認知行動療法の場合、上記の要素のうち
「人が介入できるのって”認知”と”行動”くらいだよね」
というスタンスで、その二つに焦点を当てていきます。

(誰かに怒られそうなくらい)乱暴に言うなら
「感情とか身体反応は、自分でどうこうできるものじゃないじゃん。
不安とか恐怖を感じたら泣きそうになっちゃうのしょうがないじゃん。
だったらもう少し介入の余地がある(思うように制御できるとは言ってない)、
”認知”と”行動”のほうに働きかけてみようぜ」
という考え方をします
認知行動療法のうち、認知に焦点を当てた代表的な手法として「認知再構成法」
行動に焦点を当てた手法で有名なものだと「暴露療法」や「行動活性化法」などがあります
スキーマ療法と認知行動療法
「自動思考」と「スキーマ」
さて、上記の例では「上司にミスを注意される」という出来事に対して
「使えないやつだと思われたかもしれない!」という認知を考えました。
こういった、とある場面で勝手に浮かんでくる思考やイメージのことを、
認知行動療法では「自動思考」と呼びます。
でも、同じ場面に遭遇したとき、皆がそう考えるわけではないですよね。
ある人は「そんな細かいところいいじゃん。いちいちうるさいな」と思うかもしれない
とある人は「あなたの指示が曖昧だからいけないんじゃん」と思うかもしれない
さらに別の人は「大事になる前に注意してくれた。ありがたい」と思うかもしれない

上記の例のように、同じ出来事でも「どういう自動思考が生じるか」は人それぞれです
この違いには
その人の根本的なものの見方・捉え方、いわば「その人の価値観」
ともいえるものが、深く関わっているケースが多いと言えます
この「ものごとの捉え方」や「価値観」に該当する部分を「スキーマ」と呼びます
例えば
「ミスがバレると評価が下がる」
とか
「簡単な仕事でのミスは信頼を落とす」
というスキーマがある人は、ミスを指摘された際
「ミスしたことがバレた!!使えないやつだと思われたかもしれない!」
と思うかもしれないし
「ミスは早めにつぶした方がいい」
とか
「注意してくれる=フォローしてくれてる」
というスキーマがある人は
「大事になる前に注意してくれた。ありがたい」
と思うかもしれない

「自動思考」も「スキーマ」も、どちらも「認知」ではあるけど、
その”深さ”が違う、というイメージでとらえてもらえば、わかりやすいかな、と思います
従来の認知行動療法と、スキーマ療法
従来の認知行動療法は、主にストレスがかかる場面で出てきた「自動思考」に焦点を当てて、
自動思考以外の考えにも目を向けられるようにしよう
ということを目指してきました
伊藤先生の言い方を借りるなら「思い直し」の練習、みたいな感じ
これも非常に重要なことだし、これによって認知の幅(考え方の幅)が広がって、
楽になるケースも多いです
一方で、
「似たような場面になると、結局同じ自動思考が出てきて苦しくなってしまう」
とか
「その場での思い直しはある程度できるようになったけど、
日常的に抱える感情や行動、人との関わり方などはあまり変わらず、
慢性的な苦しさが続いてしまう」
という人たちがいるのも事実です
こうした場合、その人の苦しさは、一つ一つの場面で生じる自動思考だけではなく、
感情や行動、人との関わり方など、さまざまな場面に繰り返し現れる、より広いパターンが
関係している場合もあります
スキーマ療法では、こうした長い間繰り返されてきたパターンを理解するうえで、
その背景にある「スキーマ」に着目していきます
早期不適応的スキーマ
スキーマ療法では、スキーマの中でも、特に現在その人を苦しめる要因となっているもの
もう少し正確に書くなら
過去の経験から形づくられた、記憶や感情、自分自身や他者との関係の捉え方などを含む
広いパターンの中で、今はその人の苦しさに繋がってしまっているもの
を「早期不適応的スキーマ」と呼びます
早期不適応的スキーマは、多くの場合
「現在のその人を苦しめる要因」でありながら、
「非常に強固でかつ、緩和や解消が容易ではない」という特徴があります
だって、今は苦しむ要因になっていたとしても、その人にとっては、
過去の環境を生き延びるために必要だったもの、
だから、早期不適応的スキーマを手放すこと自体が、その人からしたら
「自分を守るものを失う」ように感じられてもおかしくない

そして、ちょっと夢の無いことを言うかもしれないけど・・
それほど長い時間をかけて身につけた強固なものを、完全になくしてしまうというのも、
あまり現実的ではありません
(個人的には、早期不適応的スキーマ=消すべきもの、というのも、
考え方・感じ方に良し悪しをつけるみたいで、変な気がするし)
だから、早期不適応的スキーマを完全に消すというよりも、
そのスキーマによって苦しくなる場面を減らせるよう、
早期不適応的スキーマを少しずつ緩めていくことを目指す、
というのが、現実的なゴールになるかな、と思います
スキーマ療法の目指すところ
詳しくは次回以降の記事で書きますが、Youngさんは、早期不適応的スキーマの形成には、人生の早い時期に十分に満たされなかった欲求が大きく関係していると考えています。
そのためスキーマ療法では、そうした満たされなかった欲求にも目を向け、
早期不適応的スキーマを緩めていくことを目指します
また、治療の中では、カウンセラーとクライエント間で、これまで十分に満たされなかった欲求が、
適切な形で満たされるような関係を築いていきます
ただし、ここで重要なのは、
「治療を受ける側が、治療者から一方的に満たしてもらえばいい」というわけではない
ってこと
治療者がそばにいなくても、自分自身を支え、自分が苦しくなったときに
必要なケアをしていけるようになる
つまり、スキーマ療法が最終的に目指すのは、治療を受ける側自身が、
「自分にはどんな欲求があるのか」に気づき、それをより健全な形で満たしていけるようになること
です
スキーマ療法も、従来の認知行動療法と同じように、最終的には
「自分で自分を助けられるようになること(セルフヘルプ)」を目指している、
ってことですね・・。興味深い(・・のは私だけかもしれないけど😅)
(補足項)スキーマについて、もう少し詳しく
※以降は補足項なので、スキーマ療法の概要についてだけ知りたい方は、上記の内容まででブラウザバックいただければと思います。
スキーマの解釈が基礎心理学と若干異なる可能性
さて、ここまでは、主に「自動思考」と「スキーマ」の違いを基軸に、スキーマとは何か、というのを語ってきました。
ですが、伊藤先生の書籍によると、
Youngさんの言うスキーマと、基礎心理学の文脈で語られるスキーマには少しのズレがあるようです
(参考書籍自体が2013年のもので、最新ではないので、今は状況が変わってる可能性あり)
そもそもの「スキーマ」という概念は、認知心理学や発達心理学に由来するもので
伊藤先生曰く
我々が生まれ、育ち、生きている間に学習し、その人にとって「当然のこと」として構造化された認知のこと
伊藤絵美 編著 スキーマ療法入門 理論と実例で学ぶスキーマ療法の基礎と応用
というもののようです
といっても、
「わかるような、わからないような・・・」
だと思うので、具体例で説明します
有名な話なのでご存じの方も多いかと思いますが、
「エスカレーターの左右どちらのレーンで立つか」
というのは、地域によって違うようです
私の認知している例だと
– 大阪を中心とした関西圏は右立ち
– 東京などの関東圏は左立ち
※安全上は「どちらのレーンでも立ち止まって乗る」ことが強く推奨される・・というお話は
いったんおいておきましょう😅
隅っこは関東出身の人間ですが、最近大阪周辺に遠征する機会が幾度かありました
そして、当然エスカレーターに乗る場面も何度かありました
隅っこは、知識としては「大阪では右立ち」というのを知っています
ですが、実際に乗るときには「立って乗ろう」と思っても、思わず左のレーンに並んでしまう
という場面が何度もあります
これは、私の中に
「エスカレータの右側は歩くレーン、左側は止まるレーン」
という認知がしみ込んでいるからです
そして、このしみ込んだ認知のことを、認知心理学や教育心理学の文脈では「スキーマ」と呼びます
その認知がしみ込んでいるからこそ、普段の生活圏ではエスカレータに乗るたびに
「立って乗りたいけど、どっちのレーンに並べばいいかな?」
などと考えなくても済むというわけです(思考をショートカットして楽ができる)
この辺の詳しい話は、以下の文献が結構詳しく解説してくれていましたので、興味があればご参照ください
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmrejournal/7/0/7_KJ00008642425/_article/-char/ja/
(守﨑 誠一, 「スキーマ」を通して、文化はどのように我々の認知や行動に影響を与えるのか, 多文化関係学, 2010, vol. 7, pp. 53-67)
Youngさんの提唱するスキーマと、基礎心理学で言われるスキーマのずれに話を戻すと・・
基礎心理学でいう「スキーマ」はあくまでも「認知」に関するものです
ですが、Youngさんの提唱する「早期不適応的スキーマ」には「記憶、感情、身体感覚」など
「認知」以外の要素も含まれます
(分野によっては、「記憶」を認知に含めることもあるみたいだけど)
さらに言うと、スキーマ療法の文脈で単に「スキーマ」と言う場合、
それは「早期不適応的スキーマ」を指すケースが多く
「スキーマを緩和する」のような表現も使われるケースがあるようです
ただ、この点に関して伊藤先生自身は若干の苦言を呈しています(少なくとも2013年時点では)
スキーマとは本来、人生の早期だけでなく、人が生きて、様々な経験をする中で、新たに形成されていくものである。
伊藤絵美 編著 スキーマ療法入門 理論と実例で学ぶスキーマ療法の基礎と応用
(中略)
スキーマは解消する対象ではなく、新たに形成されるものである。
認知再構成法における自動思考については、(中略)自動思考の確信度や強度が和らぐだけでなく、その後、ブレーンストーミングを通じて新たな機能的思考を作り上げることに大きな意味がある。スキーマも同様に、(中略)新たなハッピースキーマを創出することによって、そしてそのような新たなハッピースキーマを持ちながら、あるいは身にまといながらこれから先を生きていこう、という働きかけがあった方が、クライアントにとっても役立つのではないか
伊藤絵美 編著 スキーマ療法入門 理論と実例で学ぶスキーマ療法の基礎と応用
隅っこも個人的には、伊藤先生の解釈に賛成かな・・と思ってます(何様だって話だけど)
仮に不適応的あったとしても、早期不適応的スキーマは
その人の考え方とか、捉え方に深く関わるもので、人生の核にも近いものであるわけで・・
単に「早期不適応的スキーマを緩める、解消すること」だけを強調しすぎてしまうと
「これまでの人生に深く関わってきたものが消えちゃったら、その後はどう生きたらいいの・・?」
って感じそうだな・・って

正直、スキーマ療法を実践するうえで、
上記のような細かい定義の違いが重要になるわけではないんだろうけど・・・
個人的には心に残った「補足事項」だったので、共有させてもらいました

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